「実家の仏壇の扉が閉まらなくなった」「金具が外れてしまった」「漆がくすんできたが、これは寿命なのか」。長く使った仏壇には、必ずこうした場面が訪れます。
そのとき多くの方が迷われるのが、直すのか、買い替えるのかという判断です。仏壇は家具でありながら、単なる家具ではありません。この記事では、修理で何ができて何ができないのか、そしてどう判断すればよいのかを、姫路で八代、仏壇とお寺の仕事を続けてきた立場からご説明します。
仏壇は直せます
まず結論からお伝えします。仏壇は、直せるようにつくられています。
木地・塗り・金具・金箔といった部位ごとに職人の手が入っているため、傷んだ部分だけを手当てすることができます。これは、一体成型の家具にはない性質です。古いから捨てるしかない、ということは基本的にありません。
修理でできること
仏壇の修理は、範囲によって呼び方が変わります。
部分修理
傷んだ箇所だけを手当てするものです。
- 金具の修理・交換 — 外れた、曲がった、錆びた金具の手当て
- 扉・障子の建て付け直し — 開閉がしにくくなった箇所の調整
- 欠けた部材の補修 — 木地の欠損や割れの補修
日常のお参りに支障が出ている場合、この範囲で解決することが多くあります。
塗り直し
塗りの層が傷んでいる場合は、塗り直しという手当てになります。古い塗りの状態を見て、下地から整えたうえで漆を塗り重ねていきます。
漆は、乾く(正確には「硬化する」)のに湿度と時間が必要な塗料です。一度塗って終わりではなく、塗っては乾かし、研いでまた塗るという工程を重ねます。手間がかかる一方で、これができるからこそ、何十年も前の仏壇が生き返ります。
金箔の押し直し
金仏壇の内部は、金箔で仕上げられています。金箔は非常に薄く、手で触れた箇所から傷んでいきます。押し直しは、古い箔を整えたうえで新しい箔を貼り直す作業です。
当店は仏壇だけでなく、お寺の内陣の塗り・金箔押し・彩色も手がけています。近年も、白木の状態のお寺に塗りと金箔押し、彩色を施す改修工事を、1年がかりで完工しました。仏壇の金箔押しは、この仕事と地続きの技術です。
また、当店の金箔押し体験は、兵庫県の伝統工芸体験のひとつとして認定をいただいています。
直すか、買い替えるか — 判断の3つの軸
軸1. 今の住まいに置き続けられますか
これが最初の質問です。 直したとして、その仏壇を今後も同じ場所に置き続けられるでしょうか。
住み替えの予定がある、仏間のない家に移る、実家を引き払うといった事情がある場合は、修理費をかける前に置き場所の問題を先に整理してください。置き場所の考え方は「マンションに置ける仏壇の選び方」でご説明しています。
軸2. その仏壇に、家族の物語がありますか
祖父母が求めたもの、代々受け継いできたもの。その仏壇でなければならない理由があるなら、直す価値があります。
反対に、「なんとなく置いてある」「誰が求めたか分からない」という場合は、修理費をかけるより、今の暮らしに合うものを新しく選ぶほうが、結果としてお参りが続くこともあります。どちらが正しいということはありません。
軸3. 費用の見通しは立ちますか
修理は範囲によって費用が大きく変わります。実物を見ないと正確な費用は出せません。 傷み方は同じように見えても、下地の状態が違えば工程が変わるためです。
まずは写真をお送りいただくか、実物をお持ちいただいてご相談ください。
修理をご検討の前に確認しておきたいこと
| 確認すること | なぜ必要か |
|---|---|
| 今後もこの住まいに置き続けるか | 直しても置けないなら意味がない |
| どこがどう傷んでいるか(写真を撮る) | 相談が早く進む |
| 仏壇の外寸(幅・奥行・高さ) | 運搬や作業範囲の判断に必要 |
| 菩提寺のお寺様への相談 | 仏壇をお預けする際の作法は宗派・お寺様により異なる |
| 家族の意向 | 直す・買い替えるは家族で決めること |
仏壇をお預けする際に法要が必要かどうかは、宗派やお寺様のお考えによって異なります。 一律の決まりはありませんので、菩提寺のお寺様にご相談ください。
買い替えを選ばれる場合
修理ではなく買い替えを選ばれる場合の進め方は、「仏壇の買い替えと実家の仏壇」で詳しくご説明しています。先に仏壇を処分せず、菩提寺のお寺様にご相談いただくことが大切です。
当店の本漆塗りのミニ仏壇「漆恵(うるしえ)」は、横幅32cm×奥行23cm×厚さ6.5cmのA4判ほどの大きさで、55万円(税込)から。仏壇を直してきた技術と、お寺の塗りや金箔押しで培った手仕事を、現代の住まいに置ける大きさに収めたものです。
傷ませないためのお手入れ
修理の必要をできるだけ先延ばしにするには、日々の扱いがすべてです。
- 塗りの部分は、塗物専用の布でやさしく乾拭きする
- 金箔の部分には触れない — 手の脂で傷みます
- 直射日光の当たる場所、エアコンの風が直接当たる場所を避ける
- 化学ぞうきん・洗剤・アルコールは使わない
日常のお手入れの詳しい方法は「漆仏壇のお手入れ方法」でご説明しています。
漆は、正しく扱えば時間とともに透明感が増していく塗料です。 傷むのを恐れて触らないのではなく、正しく手入れをして長く使っていただくのが、いちばん良い付き合い方だと考えています。
よくあるご質問
Q. 仏壇の修理はしてもらえますか。A. 別途費用がかかりますが、お預かりして塗り直しや金具の修理を承ります。傷み方によって工程が変わりますので、まずはご相談ください。
Q. 何十年も前の仏壇でも直せますか。A. 仏壇は部位ごとに職人の手が入っているため、傷んだ箇所を手当てすることができます。ただし木地そのものが広範囲に傷んでいる場合は、修理が難しいこともあります。実物を拝見してご判断させていただきます。
Q. 修理と買い替え、どちらがいいですか。A. 今の住まいに置き続けられるか、その仏壇でなければならない理由があるか、費用の見通しが立つか。この3つでお考えください。置き場所の問題がある場合は、修理費をかける前に整理されることをおすすめします。
Q. 修理費はどのくらいかかりますか。A. 傷み方と範囲によって大きく変わります。同じように見えても下地の状態が違えば工程が変わるため、実物を拝見しないと正確な費用はお出しできません。写真をお送りいただくか、お持ちいただいてご相談ください。
Q. 仏壇を預けるとき、お寺様への法要は必要ですか。A. 必要かどうかは宗派やお寺様のお考えによって異なります。一律の決まりはありませんので、菩提寺のお寺様にご相談ください。
Q. 金箔が剥がれてきました。触ってもいいですか。A. 触らないでください。金箔は非常に薄く、手の脂で傷みます。剥がれが気になる場合は、そのままの状態でご相談ください。
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修理のご相談を承ります
傷んだ箇所の写真をお送りいただければ、おおよその見立てをお伝えできます。実物をお持ちいただける場合は、兵庫県姫路市(姫路城の近く、姫路駅から徒歩20分)の店舗で承ります。火曜が定休日のため、ご予約いただくとスムーズです。直すべきか買い替えるべきか、判断に迷う段階でのご相談も歓迎しております。
